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ほくでんグループ制作オリジナル短編アニメーションからみる企業広報戦略とは?

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北海道電力株式会社(以下、ほくでん)は2025年12月26日にほくでんグループオリジナル短編アニメ「ともに輝く明日のために。」という作品を公開した。このオリジナル短編アニメは公開後、反響を巻き起こし、アニメ公開から10日間でYouTube上でのオーガニック再生数が10,297回に到達したとほくでんが公表している。

オリジナル短編アニメ制作背景にある想いとは?

ほくでんグループは2025年3月に新しく定めた『ともに輝く明日のために。』というパーパスのもと、北海道の暮らしを支え、地域とともに歩むことを使命としている。オリジナル短編アニメの制作は、この使命やパーパスを”物語”として伝える新たなコミュニケーション施策であると公式プレスリリースの中で説明されている。世代や立場を超えて楽しんでもらいながらメッセージを届けるという、生活者との「共感」を重視した意図が存在する。

オリジナル短編アニメとしての位置づけ

記事執筆段階(2026年3月4日確認時点)において、YouTubeの再生回数は2万6,000回を超え、高評価数も1,200を超えている。動画公開が2025年12月26日であることから、公開から2カ月余りが経過した。企業広報とは直接的な利益創出ではなく、企業のあり方や認知の拡大が目的である。特に本施策は投じた金額に対する再生回数といった従来の定量的な「リーチ指標」ではなく、パーパスへの深い理解やSNSでの反響といった定性的な「エンゲージメント指標」を重視する次世代の広報スタンスと位置づけることができる。

あえて地元に迷いを残す味わい

ほくでんグループが公開したオリジナル短編アニメは、同社グループのパーパスや使命に沿った「北海道が大好き」というありきたりな要素を全面的に押し出しただけの作品ではない。作品の冒頭、北海道の出版社に勤務する主人公は、東京の出版社に勤める女性からスカウトを受ける。

その後、雪道の過酷さや想定外の夏の暑さ、長距離移動の負担といった、北海道生活における厳しい現実が次々と挙げられていく。東京へ上京している友人たちも主人公の転職を後押しする。だが、主人公はほくでんに勤務する友人との会話をきっかけに、北海道に残るという選択をする物語である。

ちょっとした生活のリアル感

この物語は「北海道が素晴らしい」という誇りが根底にありつつ、生活のリアルな課題や悩みを描く作品となっている。単に聞こえのよい部分だけを取り上げるアニメであれば、人々の心に深く残ることは難しい。ほくでんグループが掲げるパーパスは、北海道の暮らしを支え、地域とともに歩む覚悟の表れである。本作では、北海道での生活における現実的な困難を描写し、単なる地元賛美ではないリアルな共感を生み出し、北海道を支える主要インフラ企業としての姿勢を表明するコンテンツへと昇華されている。

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ほくでんグループオリジナル短編アニメーション公式サイトより

オリジナル短編アニメとしての完成度

アニメーションとしての完成度の高さも、エンゲージメントを生み出す重要な役割を果たしている。公式プレスリリースによれば、ハイクオリティな脚本・作画・演出・音響など、企業発のオリジナル作品として異例の本格派アニメを目指して制作された。SNS上では、第一線で活躍する脚本家の花田十輝氏や声優陣を起用した本格的な制作体制を評価する声があがる一方で、企業広報としての意図が前面に出すぎているといった一部否定的な意見も見受けられた。

しかし、道内の主要企業が妥協のない作品づくりを選択したことは、生活者と質の高いコミュニケーションを目指す意思の表れである。特筆すべきは、主人公役の声優に北海道千歳市出身の鈴木愛奈さん、東京の出版社からスカウトに訪れる優秀な女性役に北海道札幌市出身の五十嵐裕美さんを起用している点である。単なる話題作りにとどまらず、地元出身者を起用して北海道ならではの世界観を構築することは、ローカルへの敬意と本気度を示す広報戦略の一環と言える。

YouTube上での広告の利用をしない戦略

北海道電力が2026年1月13日に公開したプレスリリースによると、先述の通り公開後10日間でのオーガニック再生数は10,297回であった。興味深いのは、プレスリリース内に「広告配信なし」と明記されている点である。

一般的に、このような動画をより多くの人へ素早く認知させる場合、YouTube広告をセットで出稿し視聴数(リーチ)を獲得する手法が広く用いられる。しかし、本施策があえて広告を利用しなかった背景には、短期的なリーチの拡大よりも、本当に届けたい層へオーガニックに届ける質の高いコミュニケーションを優先した戦略がうかがえる。公式プレスリリース内において、本施策が想いを”物語”として伝える「新たなコミュニケーション施策」であると明言されていることからも、これが意図的なアプローチであることが読み取れる。

アニメーション作品としての質が伴わなければ話題になることもなく、パーパスが広く知られることもない。ほくでんグループの想いを物語として伝える新たな施策は、従来の「広く浅く」から「深く響く」アプローチへと、地方インフラ企業の広報戦略が変容しつつあることを示している。次世代に託す企業広報のひとつの解が、この『ともに輝く明日のために。』に込められているのだろう。

参考リンク

ほくでんグループオリジナル短編アニメーション『ともに輝く明日のために。」公式Webページ:https://www.hepco.co.jp/short_animation/index.html
北海道電力PRTimes:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000093272.html
ほくでんグループオリジナル短編アニメーション『ともに輝く明日のために。』

※本記事は北海道電力株式会社が公開したPRTimesのプレスリリースや同社WebサイトやYouTubeをもとにキタ・タイムズ編集部が執筆しています。引用画像や引用文章の部分は引用元企業・団体・個人に権利が帰属します。